漫画『復讐の毒鼓』 ネタバレ小説ブログ

マンガ「復讐の毒鼓」のネタバレを、小説という形でご紹介させていただいているブログです。

復讐の毒鼓 第10話

「あの…葬式の手伝い、やらなきゃダメっすか?」

 さすがの加藤にも、良心の呵責というものがあるらしい。彼は、自分が原因で自殺した山崎の父親と顔を合わせることに対して及び腰になっていた。

「手伝いをすればパシリの父親はあなたに感謝するでしょう。」

 出し抜けに何を言い出すのだろうと思いつつも、早乙女の言葉に"はい"としか答えられない加藤。その心中を察してか、佐川が横から付け加える。

「想像してみろ。息子を死なせた張本人に、父親が"ありがとう"と言う姿を。」

「そそられませんか?」

 おぞましいほど冷血な早乙女のトドメの一言に、然しもの加藤も背筋が凍った。

 


 話が終わり教室へ戻ると、内村は早速勇に突っ掛かる。

「テメェ、何ガンつけてんだよ!」

「何もしてないよ…。」

 しかし内村は聞く耳を持たず、勇を焼却炉へと連れ出そうとする。すると、内村の肩を加藤が叩いた。

「おい、謹慎中だろ?」

 ところが内村はまだ教育が足りないと、そのまま勇を連れて教室を後にした。苦虫を噛み潰したような顔の加藤を、南原が諌める。

 


「3週間の"謹慎"?」

 内村にタバコの火を点けてもらいながら、勇は内村からの報告を受けていた。

「その期間中はパシリ禁止。親衛隊も一時解散。システムが完全に停止するんだ。」

「早乙女ってのは、どんなやつだ。」

 勇のこの問いに、内村は一瞬言葉を失った。

「いや…いくらなんでも会長のこと覚えてねぇのかよ…。」

「覚えてない。全部話せ。」

 内村は、泰山高校では10年前に不良サークルが解散したこと。それ以来、この学校では不良と言っても学年に数人いる程度だったことを話し始めた。勇は泰然と続きを促す。

 中学からつるんでいた親衛隊長"佐川正夫"、副会長"右山道夫"。その2人と共に、たった3人で学校の不良たちをまとめ上げ、10年振りに不良サークル"ナンバーズ"を創設したのが"早乙女零"だった。何より恐ろしいのは、それが2年前のことで、早乙女は当時まだ1年生だったということ。つまり、入学してすぐに1年生だけでなく、3年生までまとめ上げたことである。

「全校生徒を組織的に管理する、今のシステムを作ったのが去年だ。要するにこの学校は、早乙女の所有物ってわけ。」

 内村は、早乙女と"ナンバーズ"の概要をそう言って締めた。その話を聞きながら、勇は釈然としない想いでいた。

(不良サークル復活。1年で不良を束ね、2年で学校掌握。何故これほどの男の名が知られてないんだ。)

 そろそろ戻ろうと言う内村に、勇は訊く。

「加藤は葬式の手伝いに行くんだな?」

「ああ、情状酌量になるからって。」

「分かった。」

 


 その日の夕方。加藤は薄暮の色に染まり始めた街中を一人歩いていると、突然何者かに襟を引っ掴まれ、路地裏へ放り投げられた。

「んだこらぁ!」

 転げながらも罵倒した先に立っていた男の顔を見て、加藤は目を疑った。

「俺は基本、他人がどうなろうが何も感じない。だが借りを作るのが我慢できない性分でな。」

 髪を一纏めに縛った勇が、タバコをふかしながら静かに言う。

「はぁ?寝惚けてんのか?」

「山崎は俺を助けようとした。その借りを返していない。メガネを外した。お前は死ぬ。」

 言いながら勇は、普段着けているメガネを外し、最後通告をした。

「山崎の父親に事実を話して謝罪しろ。俺も大ごとにはしたくない。」

 しかし、加藤に謝罪する気など全く無い。誰か連れてきたのかと辺りを警戒し出す。"神山"ふぜいがたった一人で自分に喧嘩を売ってくるなど、とうてい考えられなかったからだ。

 勇が独りで来たと聞き、加藤は露骨にほくそ笑んだ。

「死ね。」

 言い終えるや否や、加藤が拳を振りかぶったその瞬間。

 


ドゴッ

 


 激しい音と共に加藤が顔を抑え、呻いた。足元もおぼつかない。加藤が殴りかかったその刹那、勇の鋭いパンチが加藤の顔面を捉えたのだ。

「1つ教えてやる。拳は振り回すんじゃない。」

 勇は淡々とそう言いながら、鋭いパンチを次々に加藤へと放った。

「突き出すんだ。」

 加藤はそんな勇の動きに全くついていけない。防御もままならず、一方的に殴られ続けた。

 

 

復讐の毒鼓 1 (ヒューコミックス)

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