漫画『復讐の毒鼓』 ネタバレ小説ブログ

マンガ「復讐の毒鼓」のネタバレを、小説という形でご紹介させていただいているブログです。

復讐の毒鼓 第74話

 泰山高校は男女でクラスが分かれている為、江上や木下のいる3年8組には女子生徒しかいない。五十嵐はその教室の前で1人の女子生徒と話していた。

「木下さんならさっき早退したけど…。」

「マジかよ…。じゃあ江上は?」

「百々?あそこだよ。」

 前髪を切り揃えた女子生徒が江上の座る席を見ながら言うと、五十嵐はズカズカと江上の前まで歩いて行った。

「ちょっと一緒に来てもらおーか。」

「え?どうして?」

 五十嵐の歪んだ表情にただならぬ気配を感じた江上が聞き返すと、五十嵐は突然江上を張り飛ばした。

「とぼけてんじゃねーぞ!このアマ!調子乗ってんじゃねーぞ、クソアバズレが!ざけやがって!オメー、マジでぶっ殺す!」

 床に倒れた江上を口汚く罵りながら散々足蹴にした後、五十嵐は江上の髪を掴んで引きずっていった。

「いった…痛い…痛いってば!離して…!」

 悲鳴をあげながら引きずられる江上を、クラスメイト達はただ不安げな目で追うことしかできなかった。

 


「木下千佳子が、自分から来ただと?」

 警察署の倉田の元へ、木下は自ら出向いていた。

「これ、証拠。」

 目の前のテーブルの上に、秀(と共同)の手帳をぶっきらぼうに置く。続いて木下が口にした言葉に、倉田の顔色が変わった。

「それと、これから大きな喧嘩が起きるから、早く行って捕まえて。」

「なんだって?」

 


 屋上で待つ早乙女の元へ、遠藤が近江を連れてくる。早乙女の指示で目の前まで歩を進めた彼を早乙女が問いただした。

「一条、五十嵐、神山と組んで、私をハメようとしてたそうですね。」

「えっ⁉︎」

「驚き過ぎでしょう。」

「なんの…話…でしょう…。」

 自身がしてしまった馬鹿正直な反応を慌てて取り繕おうとするも、時すでに遅し。早乙女が佐川の名を呼ぶと、彼は近江の横を素通りして、その後ろにいる遠藤の前まで歩いていった。状況が分からず、首を捻る遠藤。そんな遠藤の顔を、佐川は突然殴りつけた。

「せ…んぱい…。なんでっすか…。」

 地面に這いつくばっている遠藤は、呻くように訊く。しかし佐川はそれに答えることなく、まだギプスがはまったままの遠藤の右手首を踏みつけた。

「ぐあああっ!」

 あまりの激痛に遠藤が悲鳴をあげる。この学校のトップ3人を前に尻込みしていた近江が、その声を聞いてキレた。

「やめろ!」

「やめろ?ずいぶんエラくなったな。」

 睨みを効かす佐川を前に構えをとる。そんな近江に早乙女が、歪み切った薄ら笑いを浮かべて言った。

「待ってましたよ。そうこなくっちゃ。そっちの方が潰しがいがありますからね。」

「うあああっ!」

 恐怖とプレッシャーに今にも押し潰されそうな身体を、自らの声で奮い立たせる。近江は佐川に向かって拳を振るうも、あっさりと躱された。だが、それも織り込み済み。近江は突進の勢いをそのままに、出入口のドアまで走った。この3人を相手に、こちらには味方もいない。しかも丸腰とあっては、勝機などかけらも無い。なんとかこの状況を打破しようと近江がドアを開けると、その向こうには一条が立っていた。一条は近江に向かって拳を振りかぶる。この瞬間、近江の全身の細胞が最大音量で警告を鳴らした。とにかく身を守らなければ、殺される。一条のパンチは本能的に身を固めた近江のガードごと、彼を吹っ飛ばした。

(クソッ…!これじゃあやられちまう!)

 慌てて立ち上がった近江だが、その刹那、脇腹に重苦しい激痛が走った。放たれた一条のパンチに、反応すらできなかった。一条は辛うじて立っている近江の奥襟を掴むと、その剛腕を何度も叩きつけた。地獄の業火のように身を焼く激痛に、近江の顔が歪んでいく…。

 

 

復讐の毒鼓 5 (ヒューコミックス)

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復讐の毒鼓 第73話

「どうしましたか?驚きましたか?」

 暫く無言の勇に早乙女が問い掛けると、ようやく勇が口を開いた。

「お前か。」

「なにがですか?」

「うちに侵入したヤツは。」

 早乙女が自分の本名を口にしたことで、勇の疑惑が確信に変わった。だがそれがバレたところで早乙女の表情は微動だにしない。

「へー。なぜ気付いたんですか?」

「額縁がズレてた。」

「あぁ、額縁ですか。私みたいに金持ちだとそういうことに疎くてね。」

 露骨に皮肉を込める早乙女に、今度は勇が問う。

「最後のチャンスってどういうことだ。」

「どうしますか?後腐れが残らないよう、ここでタイマンでも張りますか。」

「望むところだ。」

 そう言いながらメガネを外す。だが臨戦体勢の勇に、早乙女はなおも語り掛けた。

「君の目的は私1人を倒すことですか?それともナンバーズの解散?」

「お前を倒せば全て終わるはずだ。」

「浅はかですね。君が私を倒したからって、このシステムが無くなるとでも思ってるんですか?私が君に負けるはずはありませんが、もし負けたとしてもたった一度だけ神山に負けた早乙女が運営するナンバーズとしてそこにあり続けますよ。単なる復讐。君にはそれ以上のことは出来ないってことです。時間の無駄でしたね。」

 黙って睨みつける勇に、早乙女は提案した。

「君にチャンスを与えます。君は毒鼓ですから。」

「どういうことだ。」

 その次の瞬間、早乙女は信じ難い言葉を口にした。

「ナンバーズに入れ。運営陣に入れてやる。」

「…。」

 早乙女は自分の卒業後のナンバーズの存続について、気に掛けていた。彼の見立てでは、来年最高学年になる今の2年の中にトップを張れる人材は見当たらなかった。

「でも君ならできる。私が運営方法を教え、来年からは君がナンバーズを引き継ぐ。そして君は報酬の中から少しだけ私に送る。それだけで月50手に入りますよ。」

「ふざけやがって…!」

 そのあまりに突拍子もない提案に怒りを露わにする勇に、早乙女はさらに説得を続けた。

「話が通じないようですね。どこから話せばいいでしょうか。私が小4の時ですが、お金の好きな女教師がいました。みんなが包んでいた金一封をうちだけ持って行かなかった。その後私がどうなったか分かりますか?」

「俺に答えろと?」

 お前の昔話などどうでもいいと言わんばかりの勇に、早乙女は自ら語り出した。

 


 その女性教師に唯一賄賂を渡さなかった早乙女は、実に巧妙な嫌がらせを受けた。間違いを犯せば、クラスメイトの前で笑い者にされる。他のどの子供よりも厳しく叱られる。いつも掃除をさせられる…。そんな中で早乙女の性格は見る見るねじ曲がっていった。他のクラスメイトをいじめるようになったのも、その頃のことだ。学校側はそんな早乙女の素行を見るに見かね、保護者面談をすることになった。その保護者面談に臨んだのは、当時検事をしていた早乙女の父親だった。彼が学校に来た途端、今まで起きていた問題が全て解決したのだった。

「金でもやったの?」

 面談の帰り道で、もう自分に手出しは出来ないと言う父親に早乙女が問う。すると父親は早乙女の前にしゃがんで話し始めた。

「いいや、本当に力があれば、誰も手は出せないんだ。私がどうして検事になったか分かるか?合法的に人を潰せる「本当の力」が持てるからだ。だからお前も「本当の力」を持て。」

 


「その「本当の力」を得るためにナンバーズを作った、と?」

 話を聞いた勇の問いに早乙女が答える。

「少なくともこの学校では私に勝てる奴はいません。私が月に54万稼いでいると言っても誰も信じないほどです。面白いと思いませんか?負け犬共は自分の理解の範疇を超えたことは、信じようともしない。現実を受け止められないんですよ。」

「負け犬はお前だ。卒業したらお前に何が残る?せいぜいバイトをするくらいだろ。」

「みんなそうやって自分を安心させるんだ。所詮不良は卒業したらバイトくらいしか出来ないだろってね…。負け犬は社会に出ても負け犬で居続けるってことを認めないと。」

「なんだと?」

「私が中学の時スイミングに通っていたのですが、負け犬達はその時もことあるごとに講師に金を渡していました。面白いと思いませんか?月謝とは別に、勝手に金を集めて渡す。これ以上の愚行がありますか?」

 早乙女の言う、"負け犬は社会に出ても負け犬"を象徴するエピソード。話はさらに続いた。

「負け犬はいつだって渡す側なんですよ。一生そうやって暮らしてきたから、その生き方しかできないんです。」

「それで?」

「君が勝ち組として生きていけるようにしてやると言ってるんです。高い場所から庶民を見下すほどいい景色はありません。しかも君は中卒でしょう?このままじゃろくに就職だってできない。この国は学歴社会です。数人の例外を見て安心するほどバカじゃないでしょうし、君がこの国で出来ることといったら君の父親のように力仕事くらいです。」

 他人の家族まで平気で蔑む皮肉に溢れた早乙女の言葉に、傘の柄を持つ勇の手に力が入る。そんな勇の怒りに構うことなく、早乙女はなじり続けた。

「どうせ今もうちから貰ってる示談金で生活してる分際で。」

 この一言に、勇の怒りが沸点を越えた。先程から力が入る傘の柄を持った勇の手は、ついに柄を握り潰した。だがここで即座に飛び掛かるほど、勇は単細胞ではない。喧嘩を熟知する勇だからこそ、怒りに我を忘れて飛び掛かることほど危険なものは無いことを分かっているのだ。

「今すぐにでもお前を倒すことはできるが、俺もお前に機会をやる。」

「なんだと?」

 負け犬の遠吠えを嘲笑うかのような見下した顔の早乙女に、勇は言い放った。

「反省する機会。」

 相変わらず人を見下したような薄ら笑いを浮かべる早乙女を、今度は勇が煽る。

「お前は自分が絶対間違ってないと思ってるだろ。こんな世間が自分を腐らせた。そんな風に自分へ言い訳しながら生きてるんだろ。」

「コイツ…。」

 にわかに気色ばんだ早乙女に、勇はさらに続けた。

「どんなに世間が腐りきってても、真っ当に生きてるヤツらがバカらしく見えても、テメェがその上に立つ権利なんざねーんだよ。」

「…。」

フランス革命で、市民たちは王と王妃を処刑した。」

「フッ、ずいぶん博識ですね。」

「いつまでもトップの座にいるつもりだろ?今度はテメェが引きずり下ろされる番だ。」

 フランス革命の時の市民たちのように。理不尽な横暴を、絶対に許しはしない。溢れんばかりの憎悪を湛えた目で睨みつけながら、勇は皮肉たっぷりに吐き捨てた。

「それから…。テメェの家族が死なせたうちの親父への示談金400万円。ありがたく使わせてもらってるよ、クズ野郎‼︎」

 


「なんの為に呼んだんだ?」

 勇が去った後の屋上で、佐川が早乙女に尋ねた。結局話は決裂した。こうなることは始めから分かっていたことだ。早乙女は佐川の問いに冷淡に答えた。

「哀れな負け犬に最後の同情の機会を与えようとしただけです。始めましょう。」

 


 遠藤の携帯が鳴る。内村の携帯も鳴る。戦いは、静かに動き出した。

 

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復讐の毒鼓 第72話

 『その他』の正体を知る者は、ナンバーズの中でも早乙女と木下だけ。つまりその秘密を秀を知っているとなると、その2人のどちらかがバラしたことになる。早乙女が知らせるなどということはない。したがって秀がそれを知っているということは、木下の裏切りを意味することになる。実に巧妙な仕掛けによって秀は犠牲になり、ナンバーズは存亡の危機を免れたという訳だ。

「だからって、あたしへ相談もなしにすぐに投書するなんて思ってもみなかったけどね。」

 木下は自分のビンタで飛ばした秀(勇)のメガネを拾った。

「僕たちはどうやって付き合うようになったんだっけ。」

「去年アンタが『僕のこと好きなの?』って聞いたでしょ。」

 少し歪んでしまったメガネのフレームを直しながら木下は続けた。

「アンタは頭がキレるのに、それでいて控えめ。あたし頭良い男に弱いの。そしてアンタは押しに弱い。退屈で仕方ない文芸部に入ったのもアンタのせい。」

「木下さんって随分ストレートだね。」

 手渡されたメガネを受け取りながら勇が率直に表現すると、木下は顔いっぱいに蔑んでみせた。

「なに?アンタも江上百々みたいにおしとやかな清純派が好きなワケ?」

「いや、別に…。江上さんのことはどうして目の敵にしてるの?」

「だっていつもアンタの近くにいるから。ムカつくし。それだけ。」

「じゃあ…去年僕の味方だったのは木下さん…?そのこと話そうとして呼んだの?」

「ううん。」

 勇の問いに木下の表情が曇る。そして重々しく口を開いた。

「五十嵐と一条。アンタと組んだフリしてるけど、本当は違うよ。」

 この言葉に何故だか勇は表情を変えなかった。良い知らせとは言い難いものの、とっておきの情報だったのに。

「あれ?ビックリしないの?」

「そんな気はしてたよ。」

 穏やかに目を伏せながらそう言う勇に、木下は話を続けた。

「あ。それとアンタの手帳、あたしが持ってるから。」

「どうして木下さんが?」

「だって元々…共同の手帳だったでしょ。交換日記みたいに。」

 ここまで聞いた勇の中に一つの疑問が湧いた。

「なんで今さら言うの?僕が学校に戻ってもう3週間も経つのに。」

「先に動くなって言ったのはアンタでしょ。」

 


 1年前、秀はくどい程に念を押して木下に伝えていた。

「何があっても木下さんは早乙女の仲間のフリしてて。僕が動くまで何もしなくていいから。」

「分かった。」

 健気にも素直にそう答える木下を、秀は何がなんでも守りたかったのだ。

 


 キーンコーンカーンコーン♪

 話をするうち、始業を告げる鐘が鳴った。

「教室戻らなきゃね。手帳いる?」

「くれるなら欲しいけど。」

「あたしが警察に持ってく。勝手に投書したアンタみたいにね。」

「いや、あのさ…。」

 自分から聞いておいて何だというのだろう?勇が抗議しかけたその時、木下が突然声を荒げた。

「学校に来んなって言ってんの!」

 思わず立ち止まって振り向いた勇が見た木下の哀しげな表情が、勇に危険を訴える。

「今週の雨の日が処刑日だから、ここは警察に任せてアンタは学校に来ないで…。あたしも雨降ったら早退するから。」

「なるほどね。教えてくれてありがと。」

 大切な人をもう二度と、あんな目に遭わせたくない。勇と連れ添って教室へと歩いていく木下の顔は泰山の女番長のそれではなく、可憐な少女そのものだった。

 


 2人が去ると、倉庫のドアが開いた。中から出てきたのは五十嵐だ。

「あのアマやりやがったな。クックック。」

 五十嵐は歪みに歪み切った笑みをその顔に貼り付けて、一人ほくそ笑んでいた。

 


 午後12時10分。ポツポツと地面を濡らし始めた雨は、すぐに本降りとなった。その雨の中五十嵐は屋上で、早乙女に焼却炉での出来事を報告する。

「オンナっつーのは好きな男の為だったらなんだってすんじゃん。だからオンナって信用できねーんだよ。あのアマ回しちまおーぜ。」

 黙々と報告を聞く早乙女に、五十嵐の無駄口が続く。

「しっかしマジで意味わかんねーよ。あんなもやしみてーな男のどこがいーんだか。」

「木下の男の趣味に興味はありません。焼却炉の倉庫は片付けましたか?」

「ああ。閉じ込められたらたまったもんじゃねーよ、あそこは。」

「では計画通り進めて下さい。神山もこちらによこして下さい。」

「クックック。クソほどおもしれーぜ。」

 醜く歪んだ気色の悪い笑顔を浮かべ、五十嵐は呟いた。

 


 教室にいる勇の元を近江が訪ねる。

「五十嵐さんから連絡が入った。今日になったらしい。午後7時だ。」

「分かった。」

 勇の表情にも自然と気合が入る。いよいよ、総仕上げだ。しかし近江は続けて不可解なことを口にした。

「それから今、屋上にちょっと行けるか?」

「屋上?」

「五十嵐さんがお前のこと教育するって言って、屋上を開けてもらったらしい。相談したいことがあるみたいだ。」

(何を企んでる?)

 既に敵と分かっている男の言葉など、信頼できるはずがない。だが勇は、警戒しつつも屋上へ向かうことにした。

 


 午後4時30分。屋上に着いた勇の前には早乙女を挟んで右山、佐川が立っていた。

「あと少しで私たちの縁も終わりですね。」

「何をしようとしてる。」

 目の前の諸悪の根源に対して勇が警戒心を露わにすると、彼は重々しく口を開いた。

「最後のチャンスを君にあげようかと思いまして。」

 そして早乙女は、確信を持ってはっきりとその名を口にした。

「神山勇!」

 

 

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復讐の毒鼓 第71話

「あんた通帳どこやった?」

 不穏な空気に慌てて帰宅の途につく江上に、木下が声を掛ける。間に合わなかった。

「え…?通帳…?何のこと…?」

 一応シラを切ってはみたものの、やはり通用しない。

「ちょっと優しくし過ぎたみたいだね。このままなかったことにするとでも思った?」

「え…?何の…こと?」

 こっそり秀に渡した。しかも、それが実は双子の弟、勇だった。そんなことは、口が裂けても言えない。江上には見え透いていても、シラを切り通す以外に選択肢がなかった。そんな江上を無理矢理連れて行ったのは焼却炉。

「塾…あるんだけど…。」

「だから何?」

 何とか理由をつけてこの場から逃げなければ。半ばパニックの江上がやっとの思いで絞り出した口実も、やはり木下には通じなかった。と、その時、戦々恐々とする江上の視界に一人の男の姿が映った。自分を挟んで江上が送る視線に、木下も自分の後ろにいるその男の気配に気付く。

「アンタ誰?」

 ちょうど自分の真後ろに立っていた仁に、木下がつっけんどんに訊く。しかし訊かれた本人は相変わらず飄々としたものだ。

「ワーオ。勝ち気な女って、俺っち結構好きだぜ。」

「は?何言ってんの?あたしのことボコるつもり?」

「まさか。俺っちただの外野だし。どーぞ続きやってよ。」

 臨戦体勢の木下は、自分とは対照的に緩い態度の仁を暫く睨みつける。

「コイツ誰?」

 不意に仁を指差しながら訊かれた江上の口から、意外な答えが帰ってきた。

「シュウの…友達よ。」

「友達?」

 


 作戦会議を終えた勇が自宅に帰ると、すぐに異変に気付いた。

(開いている?)

 玄関の鍵をかけ忘れた覚えは無い。すぐに中を確認する。

(異常はなさそうだが。)

 リビングをひと通り見渡してみるも、荒らされた形跡はない。今朝家を出た時と何ら変わりないその風景の中に、勇は一つの異変に気付いた。壁にかけてある、漫画『総帥』のポスターの額が少し歪んでいる。

「…!」

 開けられた玄関の鍵。歪んだ額縁。勇は今日、留守にしている間に自宅に起こった出来事を概ね悟った。

(決戦の時が近づいているようだ。まさか家にまで侵入してくるとは…。)

 ここから先の話は、どちらにしろ週が明けてからだ。勇はひとまず週末を休息に充てることにした。

 


 翌週。登校中の勇に声を掛ける江上は、どこか浮かない表情をしていた。

「先週木下さんと話したわ。」

「木下?何だって?」

「あなたと話したいそうよ。焼却炉に行ってみれば。」

 やはりいつもの弾むようなテンションとは大分違う。江上は勇の顔をろくに見もせずつっけんどんにそう言うと、さっさと校門へ向かって歩いて行った。

(なんだあの態度…。なんかあったのか?)

 


 焼却炉の倉庫の壁にもたれて、木下は秀(勇)の到着を待つ。そこへ勇が現れると、木下は無言で勇の頬を張った。

 バチンッ。

 ビンタの衝撃でメガネが飛ぶ。

「通帳見たなら1番にあたしに話してよ!」

「え…?」

(なんだこの状況は。)

 口を開いたかと思えば、何を言い出すのか。勇の混乱をよそに木下が訊く。

「通帳どこやったの?」

「なんだお前。急に馴れ馴れしくなんなんだ。」

「は?」

 いくら女の子が相手とはいえ、(勇としては)初対面でいきなり頬を張られては黙ってはいられない。2人は暫く無言で睨み合う。木下はおもむろに勇の髪を掴むと、何を思ったか突然勇に口づけをした。

「エラくなったもんね。本当に記憶なくしたワケ?顔真っ赤にして恥ずかしそうにしてたボクちゃんじゃないじゃん。」

 キスを終えても未だに訝しげな顔をする勇に、木下が食ってかかる。昨年の事を覚えていない旨を伝える勇に木下が放った言葉に、勇は驚きのあまり暫く口を閉じるのを忘れた。

「はんっ、笑わせないで。去年あたしと付き合ってたでしょ。」

「な…なんだと?」

(秀のヤツ…大人しそうな顔してこういうのがタイプだったのか。)

「その顔やめてくれる?ムカつくから。」

 あまりの驚きに勇がしていた表情に辛辣な言葉を浴びせると、話を本題に戻した。

「通帳、誰に渡したの?」

「警察に…。」

「警察?アンタらしいわね。」

「でもなんでだ?」

「なんでかって?アンタが発見しやすいように、あたしがわざと置いておいたからよ!」

「…!」

「ついでにもう一つ教えてあげようか?去年は言えなかったけど、『その他』は校長なのよ!」

「なに…?」

 

 

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復讐の毒鼓 第70話

「神山大二郎?顔にしろ名前にしろ田舎臭いですね。どうせ力仕事がなんかでしょう。」

 兄が起こした事故に関するファイルを見た早乙女が率直に思った事を躊躇いなく口にすると、急に父親の雰囲気が変わった。

「故人をバカにしてるのか?」

 至極真っ当な意見を言う父親に、しばし圧倒された。

「え…いえ…すみません、父さん。」

「私が処理するから、お前は勉強でもしなさい。これはもらっておく。」

「はい。私はどうせ兄さんともそんなに仲良くないですし。」

 そう言って父親にファイルを手渡した。

 


「神山大二郎…。そうだ。あの時バカにして叱られたあの土方…。」

「ん?どういうことだ?」

 そんな家族内の事情など知る由もない右山が訊くと、早乙女はひと通り説明した。

「去年うちの兄が交通事故で人を1人死なせました。うちの父親が弁護士だったために事件の資料を見たのですが。」

「ってことは…。」

「そうです。その被害者が神山の父です。」

「それに…神山のヤツ、双子なのか?だとしたら…いま学校に出て来てるのは、まさか…。」

 疑惑はついに、核心に迫る。

「兄弟揃ってつぶされることになりそうですね。」

「神山秀は?」

「まだどこかで治療中か、もしくは…死んだ。」

 さすがに戦慄が走った。早乙女を除いて。

「でも今回はマジで大ごとになるんじゃねーか?相手も備えてるだろーし…。」

 早乙女はそんな佐川の心配事にも動じない。対処の仕方は十分に心得ている。

「問題ないですよ。貧乏人にはなんのコネも力もないですから。出来る事なんてせいぜい署名活動くらいでしょう。」

「どっかのテレビ局とか報道局に売り込まれたらやばくねえか?」

名誉毀損で放送禁止にさせて、裁判に持ち込めば問題ないです。それから両者の意見を聞くべきだと世間が騒ぎ出した時、これが真実だとウソの書き込みでもすれば世論は勝手に静かになります。」

 側で話を聞いていた右山も舌を巻く。

「まぁな…お前の親父さん、弁護士だしな。検察とか裁判官の知り合いも多いんだろ?」

「法的に私に勝つことは不可能ですよ。」

 そんな2人のやりとりを聞きながら、佐川が隣の部屋のドアを開ける。照明に照らされたその部屋には今この場にいる3人にとって、驚くべき物があった。

「おい!こっち来てみろ!」

 佐川の慌てた声に2人も部屋へ入る。その部屋にはおびただしい量の書き込みがされていた。

 『早乙女零 危険』

 『不良は各クラスに2〜3人 情報は全て共有』

 『3週間謹慎 バレたらやばい 秘密裏に』

 『屋上 3年が使用 副会長が管理』

 『山崎哲郎 パシリ ピンチ』

 『副会長:9組 右山道夫』

 『<秀の手帳は何処?秀に情報を流してた味方は誰?>』

 『仁、愛 一緒にやるかも』

       ・

       ・

       ・

       ・

「ついに…。」

 勇が数々の情報を書き込んだ壁の前に立つ早乙女の顔が、見る見る歪んでいく。

「全てが明るみに出ましたね!」

 


「行きましょう。」

 緊張した面持ちで見張に立つ遠藤に、家から出て来た早乙女が声を掛けた。

「序列決めの喧嘩に勝ったのに親衛隊に入れなくて悔しかったですか、遠藤。」

 遠藤の肩に手を回しながら早乙女が訊く。

「いっ、いえ。」

「来週にある指示を出します。うまくやれば親衛隊に入れることを約束しましょう。」

「え?」

 遠藤は思わず聞き返した。親衛隊に入れなかったのは、確かに悔しかった。だが、なぜ今になって…。

「簡単なことです。言われた通りにすればいいだけ。できますか?」

「はい、できます。」

 親衛隊に入れるなら、何だってやる。遠藤は二つ返事で答えた。

 


「今日はこの位にしておくか。」

 一条が早乙女潰しの作戦会議をシメる。

「あぁ、来週中に7対7の日程決めるってことで。」

「来週までは待機でいいですか?」

「おう。俺たちが雰囲気作っとくからそれまで待っとけ。」

 近江の問いに、五十嵐が意気揚々と答えた。

 


 その夜、倉田は水谷検事から電話を受けていた。

『加藤圭が送致される前にこちらでいくつか聞き出したのですが、あとは倉田警部にお願いすることになりそうです。』

「と言うと?」

『とりあえず…加藤の陳述書を取りに来て頂けますか。それから木下千佳子に陳述内容の確認をお願いします。それからまた話しましょう。』

「あー、わかりました。あ、それから口座調査の令状は出ませんかね。」

『ええ。要請はしてみましたが、やっぱりダメでした。ですが、子供達から陳述を得た後要請すれば通りそうです。』

「はい。それでは…。」

「捜査命令ですか?」

 電話が終わると、若手刑事がすぐに訊く。

「あぁ、動きがあったようだな。オイ、検察署行くぞ。」

「はい!」

 


「え?通帳が?」

 教室で電話をとった木下の話を席で聞いていた江上は、思わず身をすくめた。

「最近はオンライン口座使ってるから…。部室にしまっておいたのは確かだけど…。…ちょっと待って。」

 携帯を耳から離した木下が睨みつける視線の先には、蒼ざめた顔の江上が俯いていた。

 

 

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復讐の毒鼓 第69話

「でもなんで火曜から木曜の間なんだ?」

「天気予報によると、その日は雨。天気予報を信用してる訳じゃありませんが、3日連続で雨の予報です。1日くらい降るでしょう。」

 神山の処刑日をその日に定めた理由を佐川が訊くと、早乙女はそう答えた。それを聞いた右山が昨年の事を思い出す。

「去年神山を潰した時も雨だったな、確か…。」

「ええ。雨だと人通りも少ないですし、見つかる可能性も減ります。」

「親衛隊に待機しろって連絡回すか?」

「とりあえず準備させておいて下さい。一条と五十嵐は神山と組んだふりをさせます。木下はもう聞いてると思いますが。」

「手当てのあれね。」

「ええ。江上百々もすぐにでも詰める予定でしたが、ひとまず待機。これから面白くなります。」

 作戦の具体案の他に、早乙女には気になっていることがあった。

「それから…。神山の家を知ってる者は?去年連れてきたのは遠藤と近江でしたね。」

「ああ。」

 そこまで確認すると、早速指示を出す。

「佐川は放課後、遠藤に待機するように伝えて下さい。」

「放課後?神山が家にいるのに行くつもりか?」

 右山の問いにも、用意周到な早乙女の頭脳が光る。

「五十嵐が神山を引き止めておくので大丈夫です。どうしてもヤツの家に行って確認したいことがあるので。あぁ、それと、その他に追加で50万円入金するように。」

 木下が了解の返事をする。校長はさらに蜘蛛の巣に絡め取られていく…。

 


 その後すぐに遠藤の携帯に指示が届いた。

 辺りがすっかり暗くなった頃、早乙女達の歩く先に遠藤が待機する。

「お疲れ様です、早乙女さん。」

「行きましょう。」

 丁寧に挨拶をする遠藤を従え、早速神山家へ向かう。早乙女がタクシーで行く旨を伝えると、遠藤はすぐにタクシーを捕まえた。

「でもなんで急に神山んちに?」

 佐川のこの問いに早乙女は答えなかったが、心の内でほくそ笑んでいた。

(秀になりすましてるヤツが勇だとしたら、秀は家にいるはず。面白くなるぞ。)

 


 神山宅に着いた一行は、すぐに遠藤に呼び鈴を鳴らさせた。勇がいなければ在宅の者がいない為、当然誰も出てこない。さすがにそこまでの事情は知らない一行だったが、早乙女はドアの鍵穴の上に何やら電話番号らしきものが書いてあるのを見つけた。

 


「開いたは開いたけど、このカギじゃ危ないですよ。もっと良いのに変えた方がいいっすよ。」

 早乙女はこの家の住人を装い、鍵屋を呼んで開けさせた。鍵屋は簡単に開けられたため、職業柄この家の脆弱性を指摘する。

「今両親が出かけているので、今度変えます。」

 体の良い理由をつけて早乙女が金を払うと、鍵屋はすぐに去っていった。遠藤を見張りに立たせると、早乙女は右山・佐川を連れて早速家に侵入する。

「痕跡が残らないように、靴は脱いで下さい。」

 リビングの壁に架けられた額が早乙女の目に留まる。勇が秀から貰った、漫画『総帥』のポスターだ。早乙女はその額が余程気になったのだろう。しばらくの間それを眺めていた。と、おもむろに額に手を掛けた。そしてゆっくりと外す。するとそこに現れたのは、父、母、秀、勇の4人が写った家族写真だった。

「神山秀が2人…?どうなってんだ?」

 写真を見て混乱する佐川の横で薄ら笑いを浮かべていた早乙女の目に留まったのは、父親と思しき男の顔だった。

「…この顔…確かどこかで…。……!」

 しばらく記憶の奥底を探っていた早乙女の脳裏に、昨年兄が事故を起こした時のことが蘇ってきた。

 


「うちの法律事務所総動員すれば揉み消せるだろ。示談金でも少しやっときゃ。」

 事故について聞いた早乙女に、彼の父はそう告げていた。そばにあった事件のファイルらしき物を早乙女が手に取って開くと、そこには勇の父親の顔写真が載っていた。

 

 

復讐の毒鼓 5 (ヒューコミックス)

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復讐の毒鼓 第68話

「誰だったんだ?言ってみ?」

 五十嵐は、昨年ナンバーズ内で秀の味方をした人物について勇に訊いた。だがそれこそ、今勇が喉から手が出る程欲しい情報の一つだった。

「覚えてない。」

「あんだと?」

「去年の事故で記憶が所々抜けている。」

 お決まりの記憶喪失で話題を躱すと、4人の間に少しの間沈黙が流れた。

「じゃーどーすんだよ。」

 思い直したように五十嵐が沈黙を破ると、勇はかねてから練っていた作戦について話し始めた。

「ひとつ提案がある。今までは俺1人でひとりずつ潰してきた。幸いにも親衛隊は謹慎期間中、学校周辺には警察の目があったこともあって出来たことだ。それに、これは個人的なことだから俺の仲間には頼みたくなかった。」

「そんで?」

「だが今は状況が変わった。仲間達にも知られたし、手伝ってくれると言っている。俺達にはもう2人いることになる。」

 ここで今度は一条が口を開く。

「じゃあ俺達4人、神山の仲間2人。早乙女側は親衛隊5人に運営サイド3人。8対6ってことか。」

「早乙女側に裏切り者がいるとすれば7対7になる。」

「おー!」

 ここまで聞いた五十嵐が目を輝かせる。大した演技力だった。

(んま、本当は9対5だけどな…!)

 心の中でそんなことを思いながら舌を出しているなど、想像もつかなかった。

「親衛隊を除いても不良達を全員合わせたら100人超えるんだろ?」

「男連中だけだと、まー60〜70だな。」

「そいつ等を除いて7対7でやれるなら勝算はある。」

「それだ!じゃあそう出来るように誘導しよーぜ。」

 たった7人で約80人を相手取るのは、作戦と呼ぶには現実味が無さ過ぎる。続く勇の提案に、五十嵐は手放しで賛成した。残る問題は今、早乙女側にいる味方の存在だ。

「でもその1人をどうやって探すんだ。」

 一条の問いに、勇の持ち前の頭脳が冴え渡る。

「ひとまず8対6の喧嘩になれば、その場で早乙女を裏切る奴が現れるはずだ。」

「…さすが…頭キレるな。やっぱガリ勉はちげーな。」

 


 自らの過ちによってこれから起こるであろう深刻な事態に、もはや成す術なく蒼い顔で俯く以外に手立てを失った校長を一人残して早乙女が店を出ると、一本の電話が入った。

「もしもし。」

『ウチのヤツ等に神山秀のこと調べさせてたろ?』

「ええ、ですがまだなんの情報も届いてません。」

『それ風見愛が口止めしてんだよ。こっちじゃそいつがドンだから。』

「風見愛?そんな奴に見えませんでしたが?…でもどうして風見が神山について口止めを…?」

 電話の相手は小学校時代のことを話し始めた。この男は5年生の時秀と同じクラスになり、時々秀を虐めていた。江上が以前その時のことを勇に話した、体格の良い少年とはこの男のことだったのだ。

『オレ時々神山を可愛がってやったんだけど、その度同じ顔したヤローが現れてオレの事ボコッてったんだよな。』

「え…?」

『アイツ等双子なんだよ。神山秀と勇。そんで勇は…毒鼓だ。』

 


 タクシーを降りて家路につく早乙女の脳裏に、これまで神山秀を調べてきた際に手下達が口にしていたセリフが蘇る。

(神山秀は雷藤仁と仲が良いそうで…。)

(神山秀?ただのガリ勉クンだろ?)

(だとしたら休学中に喧嘩の鬼になったということになりますが、そんなことはあり得ません。)

「フフフッ…フフ…。フハハハハ…!」

 意図せず込み上げる笑いに、早乙女の顔が深く歪んだ。

 


「そんなに緊張することないわよ。君は少年部に回る予定だから。」

 検察署では水谷が加藤を取り調べていた。

「少年裁判では略式起訴だし、もちろん前科も残らない。弁護士をつけることもできるわ。私は君たちみたいな不良に思うことがたくさんあるの。刑事裁判でちゃんと罰せられれば良いと思ってる程よ。でもこの国の方は優しいものね。腕の良い弁護士をつければ罪を軽くするのも簡単。ラッキーね。」

「え…は…はい…。」

「まさか本気でラッキーって思ってるんじゃないわよね?」

 言われるままに返事をした加藤を、突然水谷が睨みつける。美人検事とはいえ気の強い女性特有の圧力は、加藤をたじろがせるには十分過ぎるものだった。水谷は加藤の目の前のテーブルに一冊の通帳を置くと、再び話し始めた。

「今日君を呼んだのは、この通帳のこと聞こうと思って。」

「こ…これは…?」

「君の担当刑事さんが置いて行ったわ。泰山高ナンバーズの経理の木下さんが使ってた物。」

「!」

「先に言っておくけど、警察で陳述するのと検察署で陳述するのとは重みが全く違うから。極端な話、警察で適当に陳述して検察では真逆のことを言っても良いってことね。ただしここでの陳述は全て証拠としての法的効力がうまれるから、慎重に答えることね。黙秘権が使いたければ使っても良いわ。」

 加藤はただ焦燥し切った顔で俯いた。泰山における自分達の悪事のほとんど全てが明るみに出る。重ねてきた罪は、ちょっとやそっとで償える程軽いものではない。事の重大さに気付くのが遅すぎた。

「使うの?黙秘権。」

「あ、いえ…。」

 泣きそうな顔で黙っている加藤に水谷が訊くと、答える意思を示す。即座に質問が始まった。

「じゃあ一つ目の質問。毎月君だけ月3万円の報酬があったみたいだけど、その理由は?木下千佳子は君に借金でもあったの?」

「そ…それが…。」

 その目から炎が出るかと思うほど鋭く睨みつける水谷を前に、加藤は恐る恐る話し始めた。

 


 右山、佐川、木下が屋上に集まる。

「今日こうして運営陣だけ別に呼んだのは、神山秀について話しておくべきことがあるからです。」

 早乙女はそう切り出すと、今後の計画について話し始めた。

「その他とは話がついてます。3週間の謹慎期間を短縮し、神山を潰す予定です。神山の処刑日は、来週の火曜から木曜の間。」

 

 

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