復讐の毒鼓 第79話
「合コン中ー?」
「雷藤…仁…。」
突然の出現に泡を食う番外に、仁は直球で木下を奪いにかかった。
「わりぃんだけど、あそこにしゃがんでる緑の子、俺っちがお持ち帰りするわー。気に入っちったわ。」
「お前、ここにいるヤツ等見えないのかよ。」
「うん。見えねーわ。」
大人数をひけらかして凄む番外だったが、その程度で怯む仁ではない。集まっている番外の手下達の真ん中をズカズカと歩いていくと、その先で緑色の雨合羽を着た女に声を掛けた。その女は、こんな状況でも恐怖や諦めを微塵も顔に滲ませていない肝の据わりっぷりである。
「こんな状況でも全然ヨユーじゃん。なんだその目つき。」
「うっさい。」
「行くぞ。」
「止めろ!」
番外の一声で手下達が一斉に構える。そんな手下達など眼中に無いと言わんばかりに、仁は番外を煽った。
「番外ー。お前んとこのヤツら、だいぶケガすると思うけどいーの?」
「お前は死ぬけどいいのか?」
「行こーぜ。」
番外の言葉など聞く気がない仁が木下に声を掛けると、手下の1人が仁に殴りかかる。だが仁はそのパンチを易々と掴むと、その手をそのまま握り潰した。
一同唖然とする程の、まさに怪力。人の骨を軽々と握り潰すその怪力に、番外をはじめ全員の身体が固まった。
「こっから脱出すっからよー。俺っちの後ろ離れんなよー。」
「分かった。」
「うるぁああ!」
固まっていたのは、一瞬のこと。手下達は一斉に仁に向かっていった。
バゴォッ! バキィッ!
仁の剛腕が炸裂する。仁が手近な者から殴ると、2人の手下がまるで放り投げられた座布団のように軽々と吹っ飛んだ。圧倒的な力を前に狼狽する手下達に、かかって来いと言わんばかりの不敵な笑みを浮かべる。
「1年。」
「ハイ!」
「1人10発ずつ。」
午後7時15分、早乙女は残酷な命令を下した。その命令に従い、1年生達が次から次へと勇に暴行を加える。何人かが順番に暴行を加えた後全員でやるよう早乙女が指示すると、1年生達は寄ってたかって勇を暴行した。
「10発ずつやりました、先輩。」
「いいでしょう。ここにいる1年は16人。つまり160発。無防備な状態で160発食らっても、人って死なないんですね。」
這いつくばってうごめく勇に、早乙女は冷酷な言葉を浴びせる。
「早く決めた方がいいのでは?江上か木下か…。このままだと2人とも助けられませんよ。」
「クソ…やろ…汚ねぇぞ…。」
「そう思うなら内村を倒せばいい。簡単ですよ。もしくは私に挑むか。でもそしたらどうなるか…。分かりますね?」
早乙女は勇の顎を足で掬いながら言った。
「今すぐにでもボコボコにしたいのに出来ない。足りないおつむで私のとこまで来たのに手出し出来ない気分はどうですか?死ぬ程悔しいでしょう。これが私と君の違いです。私のとこまで来れれば潰せると思っていたでしょうけど…。」
早乙女は勇の目の前にしゃがむと、彼の髪を掴み上げて目一杯ドスの効いた声で吐き捨てるように言った。
「根本的に格がちげーんだよ。」