漫画『復讐の毒鼓』 ネタバレ小説ブログ

マンガ「復讐の毒鼓」のネタバレを、小説という形でご紹介させていただいているブログです。

復讐の毒鼓 第53話

 教室にいる近江の携帯が鳴る。呼び出しだ。確認すると、近江はすぐに食堂へ向かった。

 


 ズズズッ…。

「先輩…。」

 食堂でカップラーメンを啜る五十嵐に、近江が声を掛ける。五十嵐は麺を頬張りながら、気さくに答えた。

「おー、来たか。お前も食うか?」

「いえ、大丈夫です…。それより何の用でしょうか?」

「あー、あのな。早乙女に話しといたって言おうと思って。みんなが誤解してるだけで、お前は神山とグルじゃねーってな。早乙女も納得してたよ。もう気にしなくて大丈夫だぞ。」

「あ…ありがとうございます。」

「あ、そーだ。他のヤツらはみんな入院してんのに、オメーだけ無事なんだな。」

「…!!」

 フランクフルトの包みの袋を開けながらさりげなく放った五十嵐の言葉が、近江に突き刺さる。

「じ…自分もアバラやられて、だいぶ傷みます。」

「そりゃそーか。やっぱそーだよな。」

「はい…。では失礼します。」

 その場を後にする近江の背中を見つめる五十嵐の目が、鋭く光を放っていた。

 


「オルァ!」

 公園では臨堂が蹴りの素振りをしていた。隅のベンチに座る八木は、本を読みながらその様子を眺める。

「先に言っとくけどよ。手助けとか言って余計な事すんじゃねーぞ、マジで。」

「しないよ。僕はこれの為に来ただけだもん。」

 八木はそう言いながら、携帯に付いているカメラのレンズを臨堂に向けた。"神山"の喧嘩の仕方が見たいと、早乙女から指示を受けて動画を撮りに来ていたのだ。

「早乙女も落ちぶれたな。神山って1年の時、オレの言いなりで一言も逆らえなかったザコだぜ?オレのクソ拭いたりしてたからな。」

「ククク、ヒドいヤツ。…あ、来た。」

 八木が視線を向けた方から、勇が内村を連れて歩いてきた。早速臨堂の挑発が始まる。

「おー、久しぶりじゃん。覚えてっかー?お前1年の頃、オレのクソ拭いたりしてたじゃん。」

「覚えてない。ただ…。」

 今度は勇が臨堂を煽る。

「お前がクソだってことは、これから覚えといてやる。」

「プハハハッ。お前ギャグ線そんな高かったっけ?マジ笑えるわ。はー、ホントクソほど笑えてくるわ…。オイ、しっかり撮ってろよ。」

 ベンチに座る八木が指でOKサインを出したのを確認すると、臨堂は早速勇に飛びかかった。

「行くぞっ!」

 臨堂の右のパンチを、彼の左側に受け流す。これで左のパンチを封じつつ、相手の背後もとれる。しかし臨堂はすぐさま体を回転させて左の後ろ回し蹴りを放つ。勇はこれをバックステップで躱した。臨堂がその勇を追う右のパンチのモーションに入った刹那、勇はその腕に自分の右腕を交差させながら懐に飛び込んだ。

「!」

 見ていた八木も顔色を変える。勇は絡ませた右手で臨堂の右肩を掴み、動きを制していた。

「クソッ!」

 そのまま投げようとする勇の手を、臨堂が無理矢理振り払う。

「わお!ブラボー。マジでなかなかやるじゃねーか。スピード、注意力、瞬発力。何をとっても劣らねぇ。おめーのしょうもねー人生でのピークはここだぜ、きっと。」

「元々…しょうもないヤツは無駄口が多い。」

 口数の減らない臨堂を、勇が言葉で制した。

 


 屋上では早乙女が、親衛隊1位の一条元に神山潰しの一環で裏切り者を炙り出す計画について話していた。

「どういうことだ?」

「今言った通りです。謹慎中に、去年神山側についたヤツを探し出します。」

「その計画は今のところ誰が知ってる?」

「右山と佐川、それから木下。幹部はみんな知っています。」

 このことについて五十嵐は勘づいているが、早乙女がナンバーズの面子に直接話すのはこれが初めてだった。

「どうして俺に話した?」

「去年の事件があってから転校してきた君が違うことは確実だからです。」

「まぁな…。何があったか、もっと詳しく教えてくれ。」

「もちろん。」

 早乙女は昨年秀をリンチするに至った経緯を話し始めた。

 

 

復讐の毒鼓 4 (ヒューコミックス)

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